3.       水銀及びその化合物の取扱い

水銀及びその化合物は毒性の強い有害物質であるが,化学系実験室・研究室で使用する水銀化合物を始め,物理系実験室でもよく使用する水銀リレー・マノメーター・機器シールド用の金属水銀,病院などで使用する水銀系雑菌消毒剤・体温計・血圧計,その他に蛍光灯(3060mg/)・殺菌灯・高圧水銀灯・水銀電池・アルカリ電池・温度計など多くの用途で使用されている。これら水銀及びその化合物に関連する廃棄物や機器から飛散したり,機器の破損で逸散した水銀は,生活環境の保全及び公衆衛生の面からも適切慎重な処置が必要である。特に下水・排水の水質基準では水銀とその化合物を最高に厳しく規制しているので,これらの取扱者・廃棄物の排出者は,その処置について特段の配慮をして万全を期さねばならない。

(1)       水銀取扱い要領

(a)       貯 蔵

金属水銀は肉厚のガラス瓶に入れ,水で表面を覆い,密栓する。その瓶をポリエリレンの受皿などに乗せて貯蔵する。

(b)       使用時

金属水銀の取扱いはできるだけ低温の場所で,ポリエリレンの受皿上で慎重に行う。金属水銀は常時又は多量に取扱う場合は更に部屋の換気にも充分に注意する。金属水銀の精製は専門業者に依頼するのが望ましい。自分で精製する時には,その際生ずる水銀化合物の処理,使用器具の処理,廃棄物,廃液などにも充分注意する。

(c)       こぼれた場合の処置

金属水銀がこぼれた場合には広い範囲に散乱するので周辺を充分に点検し,細粒は羽箒又はゴム板で静かに集めて水銀スポイドで吸取る。なお残る水銀は亜鉛末・錫箔・銅粉などを用いてアマルガム化し,それを容器に収め密栓保存する。割れ目の収集不能な微粒は,多硫化カルシウムと過剰の硫黄で覆う。

水銀回収作業で,もし雑巾や紙類を使用した時は,その雑巾を流しで洗ったり,また紙類は通常のゴミとして廃棄せずに,水銀系スラッジ「Hg汚泥」として別途保管し,処理依頼する。

2) 水銀使用機器の取扱い

水銀を使用している機器類は破損などの事故による水銀の漏洩などを予測しその対策を考慮し実施しておく必要がある。水銀電極・U字型圧力計・温度調節器・各種シーリングなど破損以外でも水銀が逸散・漏洩する恐れがある機器を使用する実験室などでは,機器周辺・床・排水トラップなどを定期的に点検清掃する。水銀温度計はなるべく急激な温度変化をさけること,使用直前と直後にその都度水銀球部付近に異常の有無を点検することで不時の破損を相当程度予防又は予知できる。

水銀使用機器で他に適当な代替手段・機器がある場合は,できるだけ水銀を使用しない方法に転換することが望ましい。毒性の激しい薬品は医薬品類を除いて「毒物及び劇物取締法」によって規制を受けているが,水銀及び水銀化合物は若干の例外(カンコウHg2Cl2など)を除いて毒物に指定されている。

3) 水銀及びその化合物の廃棄処理

下水道法及び水質汚濁防止法では水銀とアルキル水銀についてそれぞれ排水基準を定められている。アルキル水銀は「検出されないこと」であり,法定分析法では検出限界が0.0005mg/Lであることからこの値が限界である。また総水銀は「0.005mg/L」以下と指示されているが,金沢市からは「基準値以下であっても問題があるので排出されないことが望ましい」と要請されている。

下水中の水銀は機械的・物理的な作業では金属水銀コロイド及びその吸着物,化学的作業ではHg2+及びHgCL42-などのイオンで存在する。金属水銀は比重が大きいにも拘らず,微粒の水銀は強い水流で浮遊することがあり,トラップ付きの流しでも永久に捕捉されているのではなく,結局排水管系に逸出する。ともかく,水銀とその化合物は希釈水量を如何に増大しても下水への排出は不適当である。(温度計1本の破損で逸出する水銀は25mプール2槽分以上の水を排出基準以上に汚染する)それゆえ水銀及びその化合物の廃棄は必ず前記「IIIの表1および表1「注記」原点処理方法一覧の注1」に従って処理する。

蛍光灯の廃品も各部局ごとに回収保管する。最終処理は各部局ごとに専門業者に委託する。水銀電池は新品購入時に廃品を購入店に返却回収させる方法が従来から実施されてきた。

また,アルカリ乾電池(アルカリ・マンガン乾電池)は通常,水銀を含有している。アルカリ乾電池の廃棄には指定された分別回収をする。さらに,乾電池類には水銀以外にも亜鉛,マンガン,鉛など多くの有害物質を含んでいるので分別回収を徹底する。

こぼれた金属水銀,亜鉛末・錫箔・銅粉のアマルガム,水銀を含むスラリー(泥漿)などは「Hg汚泥」として処理依頼する。

(4)  試薬中の水銀防腐剤について

医療系試薬(特に抗体及び抗体関連キット類)の中には,防腐剤として有害なチメロサール(有機水銀試薬;C9H9HgNaO2S))が,少量だが混入されているものがある。有害物質は含んでいない試薬と思っていても,安易に使用・廃棄せずに,もう一度確認の後に使用・廃棄などを行う。例えば,チメロサールを 0.01 含有している試薬は,水銀濃度に概算すると約 50ppm に相当し,排水基準の1万倍に当たる。チメロサールが入っているものは必ず有機水銀系廃液の扱いをする。(前記「IIIの表1」を参照する)

 

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